【母が特養に入るまで】(17)記憶の町: C子さんが今でも“住んでいる”あの頃

遠距離介護

C子さんが要介護1に認定されたのは 2017年9月で、認定の有効期間は2年間です。

年金収入のみのC子さんは、1割自己負担で介護保険サービスを利用しています。

C子さんの状態と暮らしぶりにあった在宅介護サービスを、ケアマネさんが提案してくださいます。

受けられるサービスは「介護保険の支給限度内に費用が収まる範囲で」となるので、足りない部分は自分たちで補わなければなりません。

始めはすべてのことが手探りです。

この1年間、何度もケアマネさんと連絡を取り合いながら、細々したことをその都度決めたり対応したりしました。

遠距離のため、要請されたことをすぐやることだけは気を付けています。

2年目に入った9月ケアマネさんから1通のショートメッセージを頂きました。

台所と玄関の電気が切れてしまい、洗濯機のホースにヒビが入って水漏れします。電気屋さんにお願いしてもらえないでしょうか?

“ 電気屋さん” という言葉がとても懐かしく、一瞬で子供のころを思い出しました。

昭和のころはまだ家電量販店がなく、町の電気屋さんに何でも相談していましたよね。

我が家がお世話になっていたのは 兄弟でやっている Ⅰ電気さんでした。

ちょっとクールなお兄さんとヒョコヒョコした感じの弟さん。

子供の私から見て今でいうアラサーくらいに見えたお二人なので、もうすっかり引退されているかもと思いながらググってみたらありました!  

電話をしてみると懐かしいお変わりないヒョコヒョコした感じの話し方。

実家が生業にしていた屋号と住所を告げ娘と名乗ると、一瞬だけ間をおいて思い出してくださいました。

私が結婚する前には丁度あちこちに家電量販店ができ始めた頃でしたが、電化製品はすべてⅠ電気さんで揃えると父が譲りませんでした。

今でもアイロンだけは現役で使えています。

実家の場合、何年か前まではC子さんが電話で相談して、エアコンの修理から電球の交換までお願いしていたことでしょう。

少なくとも半世紀以上のお付き合いです。

そういう関係があればこそ、こういう場合にも躊躇なく対応していただけたのかもしれません。

C子さんの現状を説明して、ヘルパーさんの作業中に見ていただきたいとお願いすると

「そうかね、それはいかんねぇ…わかりました」

Ⅰ電気さんの訪問ならばC子さんにもすぐ理解できるでしょう。

後日、電気は通るようになり洗濯機はホースの交換だけで済んだとケアマネさんから報告がありました。

ここにもC子さんの一人暮らしを支えてくださっていた方がいらっしゃいました。

 

夏に娘と帰省した時に年齢の話になりました。

ポッペちゃんがもうOLさんかね。早いもんだねぇ。

おばあちゃんは今いくつなの?

ワタシ??ワタシいくつだったかねぇ。

56くらいかね。

なわけないでしょ(笑) 私が54だもん。

アンタが?54?

ワタシいくつだろう…

おばあちゃんは81歳だよ

ワタシが? 81?????

C子さんの頭の中の世界は、父と自分たちの家を建てて、その後の生活も安定してきたころで止まっているようでした。

C子さんにとっては人生で一番充実した時期だったのかもしれません。

実家は地方の片田舎ですが、駅前の開発で何年も前から道路は広く整備され、街並みも綺麗になりました。

でもC子さんにはその新しい街並みは記憶に定着しなかったようです。

C子さんが今も住んでいるのは古い記憶の中の町なのです。

  

  

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