会社を午前中に早退し、最寄り駅にある喫茶ルノアールで２時間以上も脱力状態でした。
ルノアールを出て自宅に着くと、息子のボーが居ました。
訳を話して、例のPDFを見せます。
これ、弁護士の方も読んでるんでしょ？
読まれること明らかだよね、代理人ってなってんだから！
それなのにこんな文章‥恥ずかしくないのか？
見ておく意味はあったけど、読む価値のないシロモノだ。
まったくその通り。
泣き落としのような、自分の状況を相手の感情に訴えてくる文章です。
私が出ていってから１週間が過ぎて、やっと手紙が書けるようになった。
他人事と思っていた熟年離婚を、自分が突きつけられるとは思っていなかった。
私の不満やいら立ちを受け止めようとしなかった。
どこの熟年夫婦にもすき間風は吹くと高をくくっていた。
これからの人生、私や子ども達がいなければ生きていけない、生きる甲斐もない。
近い将来、孫ができた喜びを私と共有する楽しみを決して奪わないでほしい。
信頼を回復してやり直したい。
離婚の意思はなく、後悔と反省の日々。
子ども達に動揺を与えたのは不本意で申し訳ない、心のケアを頼みたい。
家族の匂いが消えないうちに帰ってきてほしい。
娘のポッペが仕事を終え、帰宅する時間になったのでラインを送りました。
PDFを写メして添付します。
きしょ！
見事だわ。まさにモラハラ夫の典型だね。
妻に出ていかれたモラハラ夫は必ず手紙書くんだよ。
「出ていって何日目ですね‥」で始まってどんなに惨めか訴えてくる。
テンプレートすぎてヤバイ。
ポッペは初めての就職先で、体調を崩し入院するほどのパワハラを受けた経験があります。
身をもって学んだハラスメントのイビツさを、自身の両親にも感じたのでした。
ネットで『モラハラ夫とその妻』の実例を調べたそうです。
そして見れば見るほど、両親にもその要素があると気づいたのです。
私が自分自身をモラハラ被害者と自覚したのも、ポッペに教えてもらったからでした。
私はこの手紙を読んでから、気持ちが落ち込んで何も手に着かないのが不思議でした。
感情はミリも動かないのに、なぜこんなに苦しいのか。
H弁護士へ返信しようにも、気持ちが定まらないのです。
手あたり次第にメモして、それを何とか文にしたものをポッペに見てもらうことにしました。
離婚の意思に変わりはない。形に残る返事をするつもりはない。
H弁護士から口頭で相手に伝える機会があればという条件で、書いたんだけど。
ポッペ（娘の名前）もボー（息子の名前）も「出ていけ」と言われています。
私は2021年1月「別居だな」と言われました。
今となっては私から伝えたいことは特にありません。
ひとつだけ付け加えれば、孫ができるかどうかということはご自身のオプションではありません。
ポッペ（娘の名前）とボー（息子の名前）の人生です。
私からはこれが最後です。
なんか思い付きで書いたんだけど、どう思う？
これもまさしくモラハラ被害者妻のテンプレだわ。
「私からはこれが最後です」っていうので逆切れされると思うよ。
★モラハラ夫は見下している妻に対して、感情に訴え、反省や後悔をしているように言う。
★自分の幸せを奪わないでほしいなど低姿勢で脅迫し加害者はオマエだと暗示する。
★妻は積年の思いから「もう会うことはない」「連絡を取るつもりはない」など強気になる。
★それがモラハラ夫のスイッチを押して、相手が反撃してくる。
こういう典型的な流れにならないようにするには、ポヨの面影を残さないこと。
弁護士さんに粛々と手続きを進めてもらうように返信するだけでよいと思うよ。
私が手紙を読んでから感じていた重苦しさの正体が分かりました。
まさしくそれは、「自分の方が加害者なのか？」という目に見えないトゲでした。
この１カ月ほど、自分の人生が大きく変わっていく準備に追われました。
そのゴールが目の前になり、ふと感じた情けのような鈍い痛み。
あの手紙は、そこに見えないトゲを残し「オマエのせいだ」という毒で揺さぶってきたのです。
その日の夜はそのトゲの毒で完全にやられました。
正体が分かれば怖くはありません。
でも毒を抜き、体力が回復するまでに時間が必要なのは明らかでした。
翌日は仕事を休むと決めて、倒れるようにベッドに入ったのでした。
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