私の新しい出発を、娘のポッペと息子のボーの3人で祝うときがやってきました。
この日を目指して、山あり谷ありの21カ月の末に手にしたゴールです。
祝いの席に選んだのは「しゃぶしゃぶの木曽路」。
最近ボーがぽん酢も大丈夫になり、私もポッペもここの胡麻だれが食べたくて楽しみにしていました。
配偶者が現実を知るのは早くても19時。
待ち合わせ場所まで移動中に、3人で配偶者との連絡手段をどうするか打ち合わせていました。
ワタシ、いま着拒にしました。家族ラインはどうする?
開設者は私だけど、それぞれで退会してもらえると自然になくなるからお願いしたい。私もそうするし。
了解、退会した。それと私も着拒にしたところ。
着拒は‥まだ決心付かないから保留にしてる
待ち合わせ場所で顔を合わせてからずっと、「とうとうやったね」「やりおおせたね」と健闘を称えあい達成感をかみしめていました。
席に案内され、それぞれに飲み物を注文。
店内はスーツ姿のテーブルが多く、落ち着いた雰囲気です。
お酒が運ばれて、万感の思いで乾杯しました。
私の新しい出発であり、ポッペやボーの子ども時代への決別の日でもあります。
今まで幾度となく話したことは、子ども時代の振り返りではなく、子ども達自身が成長することで明らかになってきた配偶者の真の姿でした。
配偶者は全く変わっていない。
むしろ後退しているかに見えるのは、私も含めて時間と共に何かしらを体得していった者から見た視線だったからでした。
美味しいしゃぶしゃぶを堪能し、お餅ときしめんを作っていただくところでポッペが唐突に立ち上がりました。
ちょっと一本電話してきます。よかったら二人の分先に作っていただいて大丈夫です。(ごめん、かかってきた。ちょっと行ってくるね)
私とボーにそうささやいて席を立ちます。
3人一緒に後から作っていただくことにして、ボーと話しながら待っていました。
やっぱり着拒にしてなかったんだね。
私たちとは家を出たタイミングも違うから、立ち位置も自然と違ってしまうしね。
まぁ、あの二人も今まで色々とありましたからね。
今は3人の中で一番優しく接してくれるように見えるんじゃないですか?
カン違いしてると思うけど。
トロ火にした鉄鍋が静かに沸騰し続けて、鍋肌に乾燥したアクが地層のような模様になっていきます。
15分ほどしてようやく戻ってきました。
ずいぶん粘られたね、大丈夫だった?
ポッペは努めて冷静に話してくれました。
配偶者はとにかく驚いていた、困惑して呆然としているようだったと。
まず第一声が「ママが出ていっちゃったよ」。
今一緒にいるかと聞かれて(別の場所で電話しているわけだし)「いない」と言ったら「そうか」と。
何か聞いているかと聞かれて「どうしてこういう考えになったのかということは聞いてるけど、それ以外は話せないことになってる」と言ったら「そうか」と。
それで納得するんだ。
「悲しいというのを通り越してビックリした」
「電話も通じなくなってLINEもなくなった」
そして「連絡先(H弁護士)には連絡しない。(私と)話がしたい。」と言っていたそうです。
「今さら話すことは無いから連絡先がそうなっているんじゃないの?」というポッペに「結婚する前に絶対に離婚はしないと言ってある」と言ったとか。
そうなんだ。じゃあ、それについてポヨが何て返事したか覚えてる?覚えてないでしょう?
結婚後、金銭トラブルが何度もあって「競馬や借金をするなら離婚する。止めるの?離婚するの?」と迫った私に「競馬も借金もしない」と言ったことも忘れているのでしょう。
そのあと止めるどころか今でもずっと続けていることを、ポッペもボーもあきれていたのです。
何も気づかないまま今日を迎え、呆然とした姿を娘にさらけ出して、愚痴になるからと電話を切る間際「アドバイスありがとう」と電話を切った配偶者。
その最後の姿は、ある意味私が26年間希望を持ち続けていたよりどころであり、今となってはもう元に戻れない真実が現れたのでした。
ポッペは自分がこの役割を務めるべきだと確信して、また父親の本心を確認するために電話をつないでいてくれたのでした。
〆のアイスクリームをいただいても、まだ気持ちはどこか不十分でした。
カラオケ行こう!
2時間歌ってようやく3人ともすっきりすることが出来ました。
ポッペとは駅で別れて、ボーと2人帰りの電車の中、ふと今1人であのマンションにいる老いた配偶者を思いました。
一瞬また少し気の毒に感じる気持ちが湧いたあとすぐに
でも悪いけど、よかった!じゃあね!
これから帰る私の家。
今までよりずっと便利な街で、私の希望が詰まったマンション。
最後にオセロをひっくり返していくような、こんなことが出来るなんて!
薄明るいシャッターのしまった商店街。
家までの短い距離をボーと2人、満たされた気持ちで歩いて帰ったのでした。
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