『普通の家族』は私の夢であり、希望の象徴でした。
私と配偶者は、社会人になってからそれぞれ10年ほど経ったころに紹介で知り合い結婚します。
学生時代は、特定の友達との付き合いに終始した私。
配偶者は社交的で声が大きくリーダーシップと行動力がある自信家タイプ。
正反対のようですが、『ステレオタイプではない家庭』という意味では配偶者も同じでした。
似た者同士の組み合わせ、つり合いは取れていました。
結婚と同時に配偶者の実家で舅との同居が始まります。
家の中で話される、パチンコ・競馬・競輪・競艇の話とそれを話している二人の様子が、今までの私の環境とは全く異質なものに感じました。
ある日、私は買い物をしようと町のスーパーに出かけます。
すると近くの信用金庫から、偶然にも配偶者がたまたま出てくるところに出会いました。
私服を着ていたので休日だったと思います。そこは我が家と取引のない金融機関でした。
「あれ?」と思って立ち止まっていると配偶者も私に気がつきました。とたん、目の色が変わり威嚇するように「なんだよ」と。
これが初めて目にした裏の顔の瞬間でした。
私が配偶者についてまだ話していないこと‥それは『お金』です。
結婚当初は共働きで、ポッペが授かり私は妊娠7ヶ月まで働いて退職、専業主婦になりました。
配偶者のお給料が振り込まれる口座から配偶者はお小遣い分を、私はパートナー用のカードで家計分を引き出し、舅もまだ働いていて食費を入れてくれました。
高給取りではないけれど、人並みのお小遣いは持てるくらいの余裕はあったはずでした。
それはポッペがまだ赤ちゃんの頃です。
スーツをクリーニングに出そうと内ポケットに手をいれて、底にクシャクシャに押し潰された小さな紙を取り出しました。
それはサラ金のATMでお金を返した記録でした。
返金、2万円。借入可能額‥‥頭が真っ白になりました。
私の夫がサラ金で借金をするような人だったなんて…‼
心臓が高鳴り呼吸が乱れたのを今でも覚えています。
帰宅した配偶者に説明を求めました。
まずどうしてこの紙を見つけたのか話し、今現在も借金をしているのか訊きました。
借金があるというので、金額を聞くと「140万」
そして少し気落ちしたような声で「なんでこんなことになっちゃったのかな」
唖然としました。140万‥140‥と数字がグルグル頭をめぐるようでした。
それでも気持ちを立て直し「やらなければいけないことは即日返済して借金を0にすること」と切り替えました。
そのために「私自身の貯金から補う」こと、「お金は明日昼休みに持っていく」と決めました。
配偶者には必ず明日返済するよう約束させ、受け渡しの場所と時間を決めます。
指定された待ち合わせ場所は「駅地下のマクドナルド 、11時半。」
なんでそんな場所と思いましたが、その界隈は配偶者がお昼ご飯に長年利用し続けているお店ばかり。面が割れていないのはバイトばかりのそこしかないのです。
翌日私は幼いポッペを抱っこひもに抱えて、銀行へ向かいます。
140万と聞いたけれど、万が一と思い200万用意して、50万ずつ銀行の紙袋に入れて急ぎ向かいました。
少し早めに着いたものの、すでに空いている席は入り口近くしかありませんでした。
しばらくすると配偶者が、人目があるからか悪びれた様子もなく現れます。
「すまんね」というようなことを言い、キョロキョロ周りを気にしながら向かいに座りました。
「本当に140万なの?」と聞いた時、配偶者が見せた表情にピンときて「ここで誤魔化してもしょうがない。ちゃんと答えて。いくら?」と畳みかけると「161万」と答えました。
やっぱり‥。銀行の袋を4つとも出して、そのうちの1つから11枚ぬきとりました。
それを3つ目の袋に入れるとき、近くに立っていた女子高生3人が好奇の目で見ているのを視界の端に感じました。
屈辱でした。赤ん坊を抱いた私と札束が入った3つの袋、それを受け取るサラリーマン風の男‥
あの女子高生たちにはどんなストーリーに思えたことでしょう。
配偶者は落ち着きのない様子で紙袋を受け取り「じゃ」と足早に去っていきました。
もうずいぶん前の出来事です。
その時の気持ちまでこんなにも鮮明に浮かんでくる反面、その後どうしたか、どうやって帰ったかは全く覚えていません。
その夜配偶者は帰宅すると、全額返済した証拠の清算書を私に渡して、他に借金はないということと二度とサラ金に手を出さないことを誓いました。
その時の私はその言葉を信じ、むしろ自分の貯金が夫の危機を救ったような、山内一豊の妻にでもなったような気持ちでいたのです。
「私たちの絆は強まった」と‥
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