4年間会っていない母親。

遠距離介護

先週、実母C子さんがお世話になっている特別養護老人ホームから電話がありました。

仕事が終わり、娘のポッペと待ち合わせている時でした。

緊急の連絡ではなく「メモを取ってほしいので別の日に改めてかけ直す」と電話は切れました。

  

担当者の方が連休を取っていたとかで、昨日の同じ時間帯にまた電話が鳴ります。

やはり帰宅途中の駅構内だったので、休日の今日昼間にかけ直してもらい、やっとお話しできました。

内容は夏物の衣服を補充してほしいというもの。

担当者さん
担当者さん

薄手の上下4組と肌着を4枚。

LLサイズでお願いします。

すべてLLサイズですね?

担当者さん
担当者さん

C子さんは小柄ですが、洗濯乾燥機が業務用で縮みやすいんです。

お手数ですがよろしくお願いします。

何度もかけ直していただいたことにお礼を言って電話を切りました。

こちらがお世話になっているのに「お手数ですが」なんて…。

今日は朝から体が重く本当は出かけたくなかったけれど、明日からまた仕事で買物はできません。

夕方近くに出かけて、指定されたスウェットタイプのズボンとボタンのない長袖、肌着を4枚ずつ買いました。

帰宅して早速ラベルを取って、1枚ずつ名前を書きます。

Amazonの段ボールがピッタリだったので、その中に入れました。

  

この特養に入ったのは、2年半ほど前です。

その前は1年余り民間の有料老人ホームにお世話になっていました。

認知症が進み一人暮らしのC子さんが徘徊するようになったため、急遽入れるところに決めたのです。

【母が特養に入るまで】(22)来るべき時、C子さんが直面する現実
【一人暮らしの母親と 東京で家族と暮らす 一人娘のドキュメント】実家近くの交番からC子さんを保護したと連絡が入ります。早急な対応が必要です。C子さんの現状で公的施設の受け入れ先がないとなれば、予算とはかけ離れた民間の施設で探すしかありません。
【母が特養に入るまで】(23) いよいよ住宅型有料老人ホームへ
【一人暮らしの母親と 東京で家族と暮らす 一人娘のドキュメント】実家に到着するまで約5時間。ポッペが一緒に行ってくれるので本当に心強く、思いつくことはすぐ相談してあとは走りながらやっていこうとなりました。C子さんは元気そうで、機嫌も良さそうでした。

この民間施設の入所が2019年9月、手続きにはポッペが同行してくれました。

翌年の春にはコロナが流行り出します。

その年の冬、C子さんは要介護3になり特養に入所しました。

施設を変わる際も、コロナで私は立ち会うことが出来ません。

ケアマネさんや新たにお世話になる施設の担当者さんにすべてお任せすることになりました。

2019年9月以後、C子さんには一度も会っていません。

  

少し前に特養のケアマネさんから「施設サービス計画書」が郵送されました。

利用者への援助の方針などが書かれています。

2通入っていて、1通は家族用、もう1通は施設用で〝同意欄〟に署名して返送します。

そのなかにケアマネさんのメモが入っていました。

いつもお世話になっています。C子さんは健やかにお過ごしです。コロナも大分落ち着いて、直接面会していただけることになりました。10分間と短いので遠方からでは難しいかもしれませんが、ご予約できるようでしたらご連絡ください。

特別養護老人ホームへは一度も行ったことがありません。

コロナで行けなかったのは事実です。

でも正直に言って、それを不満には感じませんでした。

  

私はC子さんへの複雑な気持ちを清算するのに長い時間がかかりました。

自分が子育てをする中で、幼い自分が感じていた〝母親への違和感〟は間違っていなかったと確信したことで精神的に自立できたと思っています。

それ以降は〝人と人〟としてC子さんと接するようになりました。

10年間の遠距離介護もC子さんのためではなく、自分のためにやるという感覚でした。

「子として最低限の勤めはする」

これは、もの心ついてから精神的に自立できるまでの長い長い葛藤とやるせなさを〝子としての義務〟と天秤にかけた時出てきた答えです。

自分が納得できるやり方で対応すると決めた時、やっと自分軸でC子さんに相対することが出来たのです。

  

施設用の「施設サービス計画書」に署名し、ケアマネージャーさんにメモを入れました。

いつも大変お世話になりありがとうございます。面会は、母に会う覚悟ができたら考えたいと思います。今後ともよろしくお願い致します。

認知症が進み、かつての本性がむき出しになった様を見る覚悟があるか。

今の私にはまだありません。

やっとつかんだ幸せで安らかな今の生活に、乱暴に小石を投げ込まれたら…。

それでも人と人として冷静に見られるだろうか。

まだ自信がありません。

  

  

  

  

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